そぬばこ

備忘録とか、多分そんな感じ。

研究室を選ぶ

この記事は UEC Advent Calendar 2019 - Adventar 20日 の記事です。
前日は id:takuzoo3868 さんのようです。

今年は書く気持ちが無かったのですが、id:Knium に酒の席でこの日を譲ってもらったので書きます。 特にネタになるようなことも無いので、帰り際に言われた「研究室の選び方」について書こうかなと思います*1

この記事では

「研究室の選び方」なんて人それぞれだと思うし、知りたいのなら適当に検索すれば出てくるものです。 そう言ってしてまっては話が進まないので、私見をまとめておいて、いつか誰かしらの役に立てばいいなと思います。 もっとも私の後輩にあたる電気通信大学の今のI類ら辺の卒研配属は、この記事が公に出るまでに第一次フェーズと呼ばれる8割の学生が卒研配属先が決まる時期が過ぎていますので、間に合わないというわけです。

あと、この記事では「研究の進め方」については触れません。 分野によって異なりますが、以下の記事がわかりやすいです*2

blog.monora.me

また、記事の筆者は現時点(19/12/20)でM1で、専門分野は機械学習の理論と自然言語処理です。 より一般的な話(また、 UEC Advent Calendar であるため UEC の中で一般的?)となるように心がけますが、気付かぬ文化の話が紛れているかもしれません。 ご了承願います。

研究室の選び方

マッチング

よく言われるのがマッチングです。 マッチングと一言で言っても、何と何とのマッチングかという話になりますね。 基本的に自分と研究室のマッチングではあるのですが、いくつか見ていきたいポイントがあると思います。

本記事で挙げるのは以下の3点で、上に挙げるほど個人的に重要だと思います。

  1. 指導教員(指導方針)とのマッチング
  2. 研究テーマとのマッチング
  3. 研究生活(+先輩)とのマッチング

指導教員(指導方針)とのマッチング

ふつう、やりたいことがやれないとしんどい ので、「研究テーマとのマッチング」のほうが重要なんじゃないかと思うと思います。 確かに、自分のやりたい研究であるという条件を満たせないとつらいと思います。 しかし、実はこの「研究テーマとのマッチング」は「自分がやっていて楽しい、面白いと思える研究を行う」もしくは「指導教員のサポート」で置き換え可能なことがあります。 さらに言えば、「自分がやっていて楽しい、面白いと思える研究を行う」ことは指導教員の指導によって後から実現される可能性があると私は思います。 一見、「研究テーマとのマッチング」と「自分がやっていて楽しい、面白いと思える研究を行う」ことはほぼ同じように見えますが、前者は「研究室選択前に研究室全体でどういった分野の研究を行っているのかの事前情報での刷り合わせ」であり、後者は「研究室に入ったあとの可能性」です。 私は後者の可能性を広げる選択肢を取るほうが良いと思って、指導教員とのマッチングを重要視しています。

しかしながら、事前の面談(ここでは、直接教員と話機会を指します)で指導教員の全てがわかるわけではありません。 ですので、私が事前にわかると思うことを以下に挙げておきます。 こちらは、特に順番に優劣はありません。

  • 指導教員の(外の)学生に対する目線
    • 上からであるか、対等に対話をしているかどうか(、下手に出るのか)
  • 指導教員の対話の仕方
    • 自分から話したいことを話すタイプなのか、学生からの話を聞いてそれに答えるタイプなのか
  • 指導教員の学生の研究の見方
    • 指導教員が学生に研究テーマを提示するのか、学生がテーマを指導教員に提示するのか
    • さらに研究室の学生に、指導教員が研究の方針を共に考えるのか、方針は放任主義で聞かれたら答えるタイプなのかを聞いておくとよいと思います
  • 指導教員の居室と学生部屋との物理的な距離
    • さらに研究室の学生に、進捗報告・ゼミ・輪講といったもの以外でのコミュニケーションの頻度を聞いておくと尚良いです

上記のポイントにおいて、どのケースが自分にとって良いか一度考えると良いと思います。 考える上で大事なことは、上記を踏まえた上で最低1年間指導教員と円滑なコミュニケーションが取れるだろうか?というところです。

研究テーマとのマッチング

先に述べたように、ここでの「研究テーマとのマッチング」とは事前情報(研究室Webページだったり、面談であったり、オープンラボであったり)による検討です。 ですので、ここでまず気にすることは「自分のやりたい分野があるのであればそれが出来るのか」でしょう。 しかし、個人的にはこれを踏まえて(自分がやりたい分野で)似たような研究テーマを取り扱っている研究室の差異を確認して検討することが一番重要だと考えます。 弊学の岡本吉央研究室のHPのように「よく似た (ように見える) 他の研究室との違い 」と紹介してもらえるケースはほとんどありません。各研究室のHP、近年の研究実績、事前の面談含めて十分にすり合わせる必要があると感じます。 もし、今自分自身が所属する大学に十分マッチする分野が無ければ、修士に進む段階で他大学への大学院進学を検討するのも一つの手です。

さらにぶっちゃければ、現状の研究への意欲とも相談して、研究テーマを完全に捨てて前述の指導教員とのマッチングを優先しても私は良いと思っています。 やりたいことへの熱意を再三確認しておくべきでしょう。

研究生活(+先輩)とのマッチング

研究室には、それぞれの研究室におけるルールが存在することが多いです。 例えば、コアタイムコアタイムの有無と制約は、自分の生活スタイルや性格と一致するか確認しておきたいポイントの一つです。 もし、夜型で夜に長く作業時間を定めて進捗を出せる人間が、朝9時からコアタイムが発生する研究室に所属すると自分の能力を発揮することが難しくなるかもしれません。 他の例としては、ゼミ・進捗報告のやり方です。 週1で自分の進捗を報告する研究室なのかどうかとか、進捗報告をスライドで行うのかレジュメで行うのか。 もし、タイミングが合えばゼミを見学させてもらうのが手っ取り早いと思います。 研究室の雰囲気を掴むのに役立ちますし、そういった雰囲気とのマッチングを検討することができるからです。

また、研究生活において、指導教員とのコミュニケーションはもちろんのことですが、他の学生とのコミュニケーションももちろん発生します。 同期で入ってくる学生を事前に確認することは難しいですが、1つ上の先輩は自分が配属された後にも在籍している可能性が高いです。 実際に研究室の学生とコミュニケーションをとってみて、自分が研究において気軽に質問できたり、コミュニケーションをとれるかどうかを確認してみてください。 ここまでに挙げているような先生方に聞きにくい質問をしながら、同時に確認出来ることだと思います。

指導教員について

指導教員は教授?准教授?助教

一見、なぜこういったポイントを気にしないといけないのかわからないかもしれませんが、これは指導教員がどの程度学生の研究を見てくれるのかという所に大きく関わってきます。 どの大学でも大学教員は何かしら大学の委員会や職務に就いており、弊学では(私の体感で)以下の大小関係で仕事の量が違います。

教授 >> 准教授 > 助教

教授職の先生は、大学職務、特にその会議が多くその分学生への指導時間は減少します。 教授職の先生は、基本的に准教授職の先生の倍くらい会議に出ているように私は感じています。 指導教員との密なコミュニケーションを望む場合には、出来るだけ教授職の指導教員は避けたほうがいいのではないかと思います。 研究室の学生に、どの程度指導教員が居室に滞在しているか聞いておくのも手でしょう。

また、助教職の先生を志望する場合にはテニュアトラック制度を利用しているかを見ておくといいと思います。 テニュアトラック制度についてここで詳しく説明しませんが、弊学においてこの制度を利用して助教になっている先生は(研究実績が十分であれば)基本的に准教授になります。 そもそもこの制度で大学に入れる時点で、その先生は研究実績が一定以上あり、これからも一定の研究業績が認められるというお墨付きをもらっているようなものです。 そういった先生が指導教員の場合、スピード感を持って研究を行える場合が多いのではないかと思います。 テニュアトラック制度には数年で審査があり、そのために先生方も研究業績を出せるようにしっかりと研究を行っているからで、厳しい環境に自分を置きたい学生にはおすすめです。

指導教員が主任著者の論文・学会発表が最近あるかどうか

上記の指導教員の大学職務における忙しさや、指導教員が研究業績を出そうとしているかと関連する話です。 簡潔に言うと、「今、指導教員自身が研究をしているのか?」というポイントです。 これはケースバイケースで、必ずしもどっちがいいというものは個人的には無いと思っています。 ただし、指導教員自身が今も研究を行っているケースのほうが、最近の研究にも詳しい傾向があると思っています。 指導教員自身の研究への熱意を測る一種の物差しであり、これだけで判断できることではもちろんありません。 自分自身の研究に対する意欲に合わせて考えるべきだと思います。

お金の話

最後に、意外と蔑ろにされがちであると感じるお金の話をしたいと思います。 研究を快適に行いたいと思うのであれば、お金を持っている研究室のほうが良いという単純な話です。 基本的には大学から学生数(+博士課程の学生数)に応じて支給されるお金*3と、科研費等の外部資金があります。 ここでは、後者の外部資金の有無と金額を気にしたほうがいいという主張をします。

研究はやはりお金がないと出来ません。 分野・領域によって異なるとはいえ、実験をするには器具・機材・計算機が必要でしょう。 買った機材や計算機も、維持費が無ければ継続させることは出来ません。 また、被験者実験を行っている研究であれば謝礼が発生します。 学会への出張費論文の投稿料*4、全てお金がかかります。 すなわち、自分自身が快適に研究活動を進めたいのであれば、大学からのお金だけではなく、外部資金を獲得している研究室を選ぼうという話です。

調べ方は簡単で、JSPSすなわち皆さんご存知の科研費科学研究費助成事業データベースで探せますし

kaken.nii.ac.jp

前年度までの実績を見たいなら、文科省予算・JST予算も見れる日本の研究.comで確認すればよいでしょう(一応、今年度以降も見れます)。

research-er.jp

ただし、自分が在籍している期間に、外部資金の配分期間があるかどうかは気をつけて下さい。

おわりに

この記事では、私が研究室選びにおいて見ておいたほうがよいと思った基準をいくつか列挙しました。 実際に私が研究室を選んだ際に気をつけたのはマッチングくらいで、配属されてからここも見ておけば良かったなと思ったことが多いです*5。 ここまで言いたいように言ってきましたが、一番大事なことは自分の意思で決めることだと思います。 最後にこの記事を見て研究室配属を行ったみなさんが、何かの役に立ったなと思ってもらえれば幸いです。

明日はid:penguin22231 さんです。

*1:uec_higeに深層学習のTipsを書くんじゃないかと言われましたが、人とネタが被るのもアレだし気が向いた時に自然言語処理関係の何かを別の記事で書こうと思います。

*2:勝手に紹介したので文句があれば言ってください

*3:こんな話もあるらしいですね

*4:私の論文誌への投稿も二桁万円かかっており、研究費から出してもらっています

*5:私の場合、運が良いことに全部を満たさないにせよ他の要素で不満に思うことは少ないです